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慢性心不全看護認定看護師より:第7回 心不全の症状:総論

心不全は、心臓の疾患によって起こる「症候群」です。

心臓は、なんらかの原因(心筋梗塞、心筋症、弁膜症など)により、心臓のポンプ機能(収縮や拡張する力)が低下しています。でも、身体はそのまま放置するわけではなく、神経系や内分泌系に働きかけて、なんとか影響がでないように頑張っています。しかし、何らかのきっかけでバランスが崩れてしまうと全身に様々な症状が出現します。

心不全の症状の原因には大きく分けて2つあります。


  1. 体液貯留によりうっ血(肺・体静脈系)に伴うもの:解剖学的に左心房・左心室に水分が貯留すると、その上流である肺静脈のうっ血となり肺水腫となります。それにより、呼吸困難感が生じます。また右心房・右心室に水分が貯留すると、その上流である体静脈系のうっ血となる顔面や下肢のむくみを生じます。

  2. 低拍出量症候群に伴うもの:収縮する力が弱い分、左心室から全身の組織に栄養を送るのに十分な血液の拍出ができないために、脳や腎臓などの臓器の酸素化の低下により、全身倦怠感、傾眠傾向、食欲低下、末梢の冷感などの症状が起きます。

それぞれの症状から、心不全の病態がわかることも多く、症状をきちんと聴くことは、心不全医療にとって、とても重要なポイントとなります。


【問題】

以下の中で間違っているのはどれでしょうか?

①心不全患者の末期状態において、息切れ、全身倦怠感、疼痛などは75%以上で起きる。

②肺水腫および胸水ともに左心不全によるものである。

③心不全患者では病状の進行に伴い、交感神経活性やレニンアンギオテンシン系が亢進する。

④心不全の低拍出量症候群は、予後不良因子のひとつでもある。



ゆみのハートクリニック(東京)

慢性心不全看護認定看護師

髙圓 恵理




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